どんな感じで診察が進んでゆくか、、ケースバイケースですが、いくつか共通の事柄を一つのマップ、あるいはガイドとして書いておきます。 　治療は、お互いが協力し合って、ゴールにたどり着く作業です。チームプレーですが、私とあなたの二人だけの時もあれば、もっと大勢のチーム（家族や恋人、友人、同僚、その他信頼できる人）の時もあります。いずれにせよ、このチームを「治療同盟」と言います。 　たとえて言うと、一緒に旅をして目的地に着くような、あるいは、一緒に謎を解き、捜し物を見つけるような、従来はこんな風な例えで説明される事が多かったと思います。 　しかし、地図は現地では無いの箴言（しんげん）の通り、実際の治療はこれらに似ているようでもあるし、違うようでもある、、です。 　私なりの説明を試みてみます。 　実際は、この通りに進むわけではありませんし、あまり先入観を持ち過ぎて治療に望むのもうまくない時もあります。ですが、闇夜の航海に望む気持ちの心細さがいくらかでも緩和されればと願い、ここに書き記します。

私たち治療同盟が、ゴールを目指すのには、まずは地図を作らないといけません。その際に基本的な方角をまず書き込みます。精神科の東西南北です。 　精神科の方角は３つあります。

たとえば、 （１）は、身体の異変は無かったか、今身体の病気は無いか？等です。 （２）は、自分の性格とか、想い、考え方などなどです。 （３）は、たとえば会社の中でポジションが変わったとか、引っ越しをしたとか、、暮らしている地域で、トラブルがあったとか、はたまた、家族内で、メンツを無くしたり、役割が変わっていないか等です。 　この地図を作るのは、私たち精神科医の役目ですので、難しく考える必要はありません。ですが、情報はあなたしか持っていないので、この３つの事（からだ、こころ、つきあい）でなにか変わった事はなかったか？なるべく情報を下さい。

そして大事なのが、いろいろな出来事（症状）が起きたのが「いつからか？」です。これは急に聞かれても分からない事も多いので、もしも、来院前に思い出せる余裕があれば、いつ頃からか、書き留めて覚え書きでも作っておくと楽かもしれません。でも、無くても勿論けっこうです。 　最初に大切なのは、羅針盤（コンパス）と時間（順番）です。 　地図はいつも書き換えられ、ゴールにたどり着くまでの道も一つとは限りません。 　良い道とは、、なるべく早く楽になること、、そして安全であること、逆戻りしてしまう可能性が少ないこと、が指標です。確かに、道を探すのはガイド（旅先案内人）の役目ですが、実際のガイドと違う所は、さしずめ、お客様であるあなたも道探しに参加する事でしょうか。

早く楽になる為に、大いに助けになるのは、薬です。これは即効性が一番ある。これは現実です。でも勘違いしないで下さい。 　薬には、あなたの心を変えてしまうような、あるいはあなたの人格を変えてしまうような力はありません。薬は、身体に効きます。そしてあなたの心の「かまえ」に効きます。 　うまく物が考えられない、、とか、考えるスピードが遅くて言葉がでないとか、、、不安が大きすぎて、前に進めないとか、あるいは、一つの事や細かい事にひっかっかって考えや行動が前に進まない、、とか、ひっきりなしに、雑多な考えが頭の中に浮かんで来て、疲れる、あるいは誰かの声が頭の中に聞こえてくるとか、いらいらして集中できない、、、ともかく眠れない、、、とか。 　そんな辛い症状には一番早く効くでしょう。 　その結果、余裕が出てきて、自分のこころやからだ、あるいは周囲のつきあいに対して、新たな工夫ができるようになり、、 　今までと同じ道を通らなくてすむ、、つまりストレスを受けないですむようになる。こうなれば、薬はもう必要無い事が多いのです。 　薬だけですべてが解決する訳ではありませんが、確実に助けにはなってくれます。それが薬です。正しい服用の仕方や知識があれば、全く怖いものではありません。（そのために僕らが居ます） 　クリニックにせっかくいらっしゃるのに、更にストレスが増えるような事はありませんし、もちろんしたくありません。どうぞ早めにご相談下さい。 　身体の病気に限らず、精神科・心療内科でも、早めに治療を受ける事が、症状や経過を軽くすませるコツなのです。 　精神科の治療を旅にたとえて説明させていただきましたが、、、最後 に大切な事を一つ。 　この旅には、勿論、乗り物（お薬とか）や便利な道具（精神療法な ど） も使いはしますが、ご自身の、「目的地にたどり着きた い」と想い願う気持ちが大切です。ご自分で歩かなければならない箇所 は、（お手伝いしますが）そうしてい ただかないと前に進みま せんし、この旅の主役はあなたご自身なのです。

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