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生まれて一番最初に受け取る物語は、やはり家庭環境でしょう。家族の価値観や雰囲気、そして兄弟順位などがその子のもつ基本的物語に相当強い影響を与えます。
ある子供は教師の家に生まれ、自分も自然に教師になる事を期待され、いつのまにか自分も教師になる事が自然に思えて頑張るようになるかも知れません。教師が、警察官、あるいは医師に置き換えられてもいいです。長男であれば、リーダーシップや責任感を期待され、そう振る舞おうと努力したり、神経質で慎重で臆病な生き方をすると言う物語を発展させるかも知れません。長女であれば、同じ様に頑張り屋の教師になろうとして、それでも父親が男子に期待する様な事を期待できないのを残念に思っている(自分が男に生まれなかった事)を無意識に知って、『いくら頑張っても、結局親の期待に添うことはできない』と言う物語を作ってしまうかもしれません。人それぞれですが、、。
しかし、一度物語り化された基本的な生き方は変わらないかと言うとそうでもありません。日々、人は、物語を作り替えています。新しい出来事や、新しい人に出会う度に、自分の中にある物語を書き換えてゆきます。一日一日の書き換えは僅かかも知れませんし、決定的な事に出会って、大きく書き換えられる事もあるでしょう。
こんな患者さんが居ました。教師の家に生まれた彼女は、親の期待どおり、教員採用試験に受かり、地元の中学校の教師に就任しました。一生懸命、こうあるべき姿の教師を演じ、生徒達にも『こうあるべき』責任感やよい子である事を期待し、へとへとになるまで頑張ります。しかし、ある時から彼女の頑張りは空回りし始めます。
生徒達は荒れ始め、生徒父兄からは苦情が出、職場では先輩や校長先生から助言をもらいます。彼女はますます、『あるべき姿』に固執し、ヒステリックになって行きます。どんどん悪循環で、参ってしまい、ある日精神科を訪れ、不眠、うつ状態だからと診断書を書いてもらい、休む様になります。それから半年、休んでいる事にも罪悪感を覚える彼女はちっとも良くなりません。さて、4月から、責任の無い立場で、補助教員として、新入生達を受け持つ事になりました。
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何が起きたかは正確には分かりません。ある日、病院に来た彼女は、別人の様に生き生きして輝いていました。『先生、子供達って可愛いんですよ』と開口一番。自分が教師をしたいと最終的に決めたのは、子供たちが可愛くて仕方がないと実習で思った事が決定的だった、、と言う記憶を語ってくれます。『こんな感情を忘れていました』『自分は親が教師だったから、期待されていたから教師になったんじゃなかったんだ。』と彼女の語る物語が、初診の時とすっかり変わっています。今は、悩みながらも、余裕を持って、生徒達に対応でき、元気に仕事をしています。
よく似た人で、全く違う物語を発展させた人も居ます。彼女は小学校高学年の教師でしたが、やはり疲れ果ててしまった所までは一緒なんです。しかし彼女は休まず頑張り通します。へとへとになりながら、もう駄目だ、自分は駄目な教師なんだと思って正月を迎えたところ、教え子から年賀状が来ます。『先生大好き』と書かれてあったそうです。
この辺りから彼女の語る話のストーリーが変化しはじめます。新学期からは小学校3年生の担任になって、『子供が本当に可愛いと思えた』となり、後は先ほどの方と同じ様な語り口になって行きました。この場合、『頑張ってなんとかする』と言う基本的ストーリーは変わっていません。やりとげた達成感も手伝って、新学期からみるみる回復してゆきます。
この様に、似たような状況でも、物語は人それぞれ。物語の変化や交換も人それぞれなんです。物語は、語られ、そして誰かと物語が交換される事によって、徐々に、あるいは突然変わります。
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桜木町クリニック/桜木町、日ノ出町、みなとみらい、心療内科、精神科
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